代謝をキーワードに 肌を読み解く


そこに至るには順序があり、解決にも順序があります

第一弾は 「乾燥」

身近な、よくある悩みのようですが、全ての肌悩みは「乾燥」から始まる、とも言えます。
なぜなら、「乾燥」は自力での肌の入れ替わりがうまく行かなくなった時に現れる、一番最初の兆候だからです。

肌の持つ、入れ替わりの仕組み

人の身体には、不要になった老廃物を体外に排泄するという、健康を維持するための仕組みが備わっています。

それは、肌においても同じです。肌奥で新しい細胞が生まれ、少しずつ表面へと押し上げられていき、表面に達し役割を終えると、垢となって、毎日一層ずつはがれていきます。その旅立ちを合図に、また肌奥で、母細胞が新たな細胞を産む…。

これは、老廃物を溜めないために肌が発達させてきた、健康を保つための自浄の仕組みとも言えます。

これが上手く機能しているうちは、ほとんどお手入れをしなくても、お肌を保つことができます。子どもの頃、お風呂で身体を洗うついでに、浴用石鹸でチャチャッと顔を洗う、それだけでお肌はすべすべでしたよね。虫刺されの跡だって、日焼けだって、気づけば消えていました。これも肌に入れ替わりの力があるからこその現象です。そんな頃を、昔懐かしく思い出した方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自力では、老廃物が旅立てなくなる時

ところが、持って生まれた この入れ替わりの能力の強さ弱さだったり、加齢、環境、日頃のスキンケアなど、様々な要因で、新陳代謝の力に陰りが出て来るようになると、今まで勝手に旅立ってくれていた垢が、旅立ち損ね、肌の表面に居残ってしまうようになります。

その旅立ち損ねた古い角質(垢)の部分が、いわゆる「乾燥」の正体です。

つっぱったり、粉吹きしたり、肌がカサカサ、ガサガサ、パリパリしたり。はたまた皮浮きしてみたり…。
くすんだり、お肌のトーンが暗くなったりする事もあります。肌の「荒れ」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
その居残った古い角質の状態によって、乾燥の形態や感触など異なりますが、その実体は、全て古い角質です。

そう聞くと、ご自身の肌では、旅立つべきものは旅立てているのか?…気になってきませんか。そんな方に、お伺いしたいのが次の質問です。夏場は、汗でもしっとりしてしまい、本来の状態がカモフラージュされて分かりづらいので、寒い季節を念頭にお答えください。
(洗顔料にも保湿が求められる現代では、シンプルにただ洗うことすらも難しくなっていますので、厳密な判断にはなりませんが、目安にして頂けたらと思います。)


洗顔後や入浴後、すぐに保湿しないと乾きますか?

「乾かない」という方、素晴らしいです。しっかり自力で、肌の入れ替えが行われています。むしろ必要ないものを塗って、その力を削いでしまわぬように、存分に活かしてあげてください。

「たまに乾きを感じる事がある」という方。そういう時があったとしても、何もせずとも数日で自然に(勝手に)乾きが解消されていくようでしたら、あなたの肌のでの入れ替わりの能力は活発だと言えます。自力でリセットが効く状態です。是非その力を大事にしてあげて下さい。

でも、もし、いつもすぐ保湿しないと乾いてしまい、それが日常的に続いているのであれば・・・あなたの今のお肌の入れ替わりの力は弱まって、本来の力を発揮できていない状態と言えます。

健顔なさる皆さんがよくおっしゃるのが 「つい化粧水を忘れちゃいそうになる」。
乾かないから、つい、つけるのを忘れそうになるのだそうです。古い垢の積もっていない、新鮮な角質(肌の本当の表面)は自前の潤いに満ちていますので、それが常に表面に顔を出している状態になれば、本来、肌は、何かつけることすら思い浮かばなくなってしまう…それ位 乾かないものなのです。

肌はサラサラしてるもの

そもそも、本来の肌表面というのは、サラサラしているものです。しっとりしたり、テカテカしているものではありません。
赤ちゃんは、新陳代謝の塊のような存在ですが、さわってみると、吸い付くようなしっとり感はありません。肌は、サラッとしています。

それが、いつでも入れ替われるようにスタンバイしている、ということ。そして、それが健やかな肌の証です。

逆に、しっとりしたり、ぺったりしている肌表面というのは、旅立つべきものが旅立ちづらい状態になってしまっています。人工の保湿成分や、はたまた自前の過剰なアブラ分なども、剥がれようと浮き上がる古い角質を、糊のように留めつけてしまう作用があります。

糊づけされれば、旅立つためには、更にパワーが必要に・・・。肌が乾くからと必要以上の保湿を続けていると、肌が自力で入れ替わる力を、かえって削いでしまう事にも なりかねません。

高く積もって、乾燥する


古い角質は、既に役割を終えた残骸ですから、ミイラのようなもの。存在自体が乾いていて、潤いはありません。ですから何か塗った瞬間は、塗ったものでしっとりしますが、それを自ら維持する事はできません。時間がたったり、顔を洗って塗ったものが洗い流されれば、古い角質はまた浮き上がろうします。すると、乾いたと思って また塗りたくなり、古い角質たちを更に肌にへばりつかせてしまうのです。

こうなるとイタチごっこ。”塗っても乾く、塗るから更に乾く”肌が作られていきます。
乾くから落としすぎない様に…と残せば、今度は残ったものが乾いたり、詰まったりして硬くなり、こびりつきます。

乾く原因の古い角質をそのままに、乾燥に対処しようと思っても、塗る事位しかできません。そうなると、じゃあ何を塗ろう?という発想にしかなりませんが、塗る事では、根本的な解決は難しいと言えるでしょう。

肌の仕組みを活かした解決

肌には、ひとつ大切な仕組みがあります。それが ”旅立つのが先、生まれるのは後” ということ。肌は厚みを一定に保ちたいので、表面の役割を終えた古い角質が一層旅立った時に、肌奥に存在する母細胞がそのサインをキャッチして、「ひとり旅立ったから、次の新しい赤ちゃんを産みましょう」と新しい細胞を産んでくれます。

・・・ということは、上に残骸が積もっていくということは、ただ単に乾燥する、くすむ、メイクのノリが悪い、などといった目先の問題では終わりません。
表面からの旅立ちのサインを受け取れなくなった母細胞は、新陳代謝の源である”新しい細胞を定期的に産む”ことが出来なくなるのです。

いつしか、積みあがった層は、もうひとつの老廃物であるアブラとも手を組み、鍋蓋のように、がっちりと肌を塞ぎ込めていくようになります。肌の上には鍋蓋、肌奥からの生み出しは停滞…となると、今度は行き場を失った老廃物が、肌内部に蓄積されて、肌のゆるみ、たるみといった次の段階のトラブルへと繋がっていくこととなります。そちらについては、また別の項目でご説明しましょう。

私たちが実際に触れて、感じて、お手入れできるのは、肌の表面だけ。でも、この表面から老廃物を旅立たせることで、直接ふれる事のできない肌奥の、生み出す力を取り戻すことが出来ます。肌奥での生み出しの力=表面における旅立つ力 でもありますから、この奥から表面へという肌の動きを強化することで、要らぬものが旅立ちやすい肌=乾かない肌 が育っていくのです。


世の肌が「乾燥」に見舞われた時に打つ、最初の一手を間違えなければ、
その先のトラブルに悩む方をも減らすことができる。

塗るだけではない選択肢があることを、知って頂きたいと願ってやみません。

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